血中コレステロール値が上昇すると、動脈硬化などの血管の病気が促進され、脳梗塞、心筋梗塞、血栓症などの原因となることが知られています。コレステロール対策こそ、心臓疾患を予防する鍵といえます。
「みその原料となる大豆に含まれる有効成分が血中コレステロールを低下させる」という研究結果をまとめたのが、県立姫路工業大学・辻啓介教授です。その概要は以下のとおりです。
●大豆にはリノール酸という不飽和脂肪酸が多く含まれています。このリノール酸単体でも血中コレステロールを便の中に排出する作用があります。大豆にはリノール酸に加えて、植物性ステロールとビタミンEも兼ね備えており、この3つの成分が相乗的に働くと、リノール酸単体よりも、はるかに大きなコレステロール抑制効果をあげることがわかりました。
●大豆に含まれるペプチドもコレステロール抑制を期待される成分です。ペプチドは難消化性で、大腸まで行って排出されますが、その途中で胆汁酸と結合します。胆汁酸とは、肝臓でコレステロールから作られる物質で、腸の中で油の吸収を促進する物質です。
この胆汁酸がペプチドによって便中に排出されてしまうと、肝臓はさらにコレステロールを消費して胆汁酸を合成しようとします。その結果、体内にプールされたコレステロールが減って、コレステロール値が低下するというわけです。
辻教授は、上記の成分のほか、大豆の食物繊維やサポニンも血中コレステロールを低下させる作用があると述べています。大豆がみそに加工された場合でも、各成分の作用は変化しません。
「過去、欧米に比べて、日本人に心臓病が少なかった理由の一つは、みそ汁を代表とする大豆食品を食べる文化を継承してきたからだといえる」と辻教授は記しています。